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◆講演者:Dr. Shohei Yasuda (アイルランド、ゴールウェイ大学、ポスドク)
◆講演タイトル:”New perspectives of complete ammonia-oxidizing bacteria: Metagenomic insights for resource recovery from wastewater treatment facilities”
◆日時:2025年1月28日(水)(16:00~17:00)
◆会場:東京農工大学 小金井キャンパス 14号館 3階 301実験室
◆言語:英語
◆開催担当者:グローバルイノベーション研究院・工学研究院 寺田 昭彦(グローバルイノベーション研究院 GRH「栄養塩マネジメント学拠点」拠点)
◆開催案内
◆参加人数:12人
講演概要
2015年に完全アンモニア酸化を担う細菌(Comammox)の発見に関する研究成果2報がNature誌に発表された。アンモニアを硝酸イオンに変換する微生物は、アンモニアを亜硝酸イオンに変換する第一段階と、亜硝酸イオンを硝酸イオンに変換する第二段階に分かれており、2つの異なる微生物によって変換されている学説を覆す発見である。このパラダイム転換から10年が経ち、Comammoxの様々な環境下での検出や、Comammoxのユニークな代謝機構が見出されてきた。講演者であるアイルランド・ゴールウェイ大学の安田博士は、窒素除去を行う排水処理施設に生息するComammoxの生理生態解析を通し、先進的な研究を行ってきている。本セミナーでは、2015年の発見から現在に至るまで日進月歩で進んできたComammoxの代謝機構に関するレビューをして頂いた。また、ご自身の研究成果である埋立地浸出水の処理施設で見つかったComammoxの系統学的および生理学的な新規性をわかりやすく説明頂いた。特に印象的であったのは、Comammoxのアンモニアおよび酸素に対する高い基質親和性を保有していること、アンモニア酸化の副生成物として生成される温室効果ガスN2Oの排出量が他のアンモニア酸化微生物よりも少ないことである。これらの特性は、排水処理の省エネ化、温室効果ガス削減に大いに役立つものである。また、安田博士が新たに存在を明らかにしたComammoxは、塩濃度が生活排水よりも1桁高い環境で生息し、高塩濃度の環境下で浸透圧を和らげる適合溶質を産生できる遺伝子や、塩分を排出可能なチャンネルタンパク質産生の遺伝子を保有している。これらのユニークな特性をご紹介する中で、排水処理施設のComammoxを利用した適合溶質などの資源回収プロセスへの展開や、高塩濃度環境下で生息する好塩性・耐塩性細菌を用いた利益を創出できる資源回収施設の展望もご紹介頂いた。安田博士は、このようなComammoxの驚くべき機能についてわかりやすく説明しただけでなく、修士課程卒業後に貿易会社で10年以上勤務し、博士後期課程に戻り研究者を志したユニークな職歴についてもご紹介され、新たなチャレンジをすることに対する助言も若手研究者、学生に行って頂いた。Comammoxの最先端研究に関する質問・ディスカッションに加え、進路に関する質問に対しても丁寧にご回答頂き、参加者にとって大変実り多いセミナーとなった。
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