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◆講演者:Dr. Filippo Rossi (イタリア、ミラノ工科大学、准教授)
◆講演タイトル:”Functionalized colloids as promising tools for selective drug delivery in spinal cord injury”
◆日時:2025年2月20日(木)(15:00~16:00)
◆会場:東京農工大学 小金井キャンパス 6号館 5階 501セミナー室
◆言語:英語
◆開催担当者:グローバルイノベーション研究院・工学研究院 桑原利彦(グローバルイノベーション研究院 ライフサイエンス分野 田川チーム)
◆開催案内
◆参加人数:20人
講演概要
Filippo Rossi先生をお迎えして,GIR公開セミナーを開催した.Rossi先生は,ハイドロゲルやナノ粒子の化学修飾を専門とし,Politecnico di MilanoのChemistry, Materials and Chemical Engineering “Giulio Natta”に所属し,2022年にTOP2% Scientistsに選出され,Global Young AcademyのFellowに就任されるなど,これらの活動から化学修飾分野の若手トップ研究者の1人である.
今回のセミナーではRossi先生が研究してきたハイドロゲルやナノ粒子表面の化学修飾の紹介から,細胞接着標的分子を修飾したナノ粒子を使った神経細胞の選択的なマーキングまで,Rossi先生が幅広く進められている研究について解説いただいた.とくに治療が困難である脊椎損傷の修復を目的とした薬剤送達のための機能性ハイドロゲルナノ粒子の生成とその効果について発表いただいた.異なる化学修飾を駆使することで,ミクログリアやアストロサイトといったそれぞれ目標とする神経細胞をターゲットとして,細胞選択性のあるナノ粒子の生成に成功しており,その結果について評価した結果を説明された.これらのナノ粒子は患部に注入が可能なことや,標的となる生体組織へのストレスの低さ,生体液を保持する性能,多様な薬物の送達を制御できることなど,様々な特性を有している.これらを実際にマウスによるin vivo試験でターゲットの細胞に集積することを確かめるなど,実際にデモンストレーションの結果についても見せていただいた.さらに,このような医療技術について,研究フェイズと開発フェイズの間には大きな隔たりがあり,製品化がいかに難しいか,それを乗り越えるために研究フェイズのアカデミックが奮闘していることなどをジョークも交えながら講演いただいた.
春休みの期間にもかかわらず,多くの教員・学生が参加した.公演終了後には聴衆から多数の質問があり,薬剤送達の基本的な背景から専門までわかりやすく説明いただいた発表から,学生からも質問が出るなど,活発な議論が展開された.このように,教員だけではなく,多くの学生に刺激を与える極めて有意義なセミナーであった.