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◆講演者:Dr. Takeshi Harayama (フランス、コートダジュール大学、グループリーダー)
◆講演タイトル:”Connecting lipid tail structures to cellular functions”
◆日時:2024年11月29日(金)(17:00~18:00)
◆会場:東京農工大学 小金井キャンパス 8号館 1階 L0811講義室
◆言語:英語
◆開催担当者:グローバルイノベーション研究院・工学研究院 津川 裕司(グローバルイノベーション研究院 ライフサイエンス分野 川野チーム)
◆開催案内
◆参加人数:40人
講演概要
原山氏の来日講演はこれで3度目である。本年度のタイトルにあるように、リン脂質の疎水性部(lipid tail)の構造の違いが細胞機能におよぼす影響について、最新のデータを含めて講演していただいた。タンパク質や遺伝子の機能を調べるためには、DNAの配列を変更することで実施可能である。しかしながら、脂質分子の構造はゲノムに直接コードされているわけではないため、操作し検証することは難しい。原山氏は、そのような状況の中、(1)細胞に脂質化合物を添加する(2)脂質関連遺伝子をゲノム編集で操作するという主に2つの操作技術を組み合わせることで脂質構造と機能に迫る研究を行っている。また、質量分析装置や蛍光プローブを利用することで脂質を観察し、様々な仮説生成を行っている。これら技術を組み合わせて行った最新の事例について、いくつか紹介いただいた。具体的には、エーテル型脂質のフェロトーシスとの関連について紹介いただいた。着目しているエステル型のリン脂質とエーテル型のリン脂質とフェロトーシスの関係を詳細に調べることで、最終的には、エーテル型リン脂質の生合成の場であるペルオキシソームの代謝に着目し、そのメカニズムに迫った内容を紹介されたが、とても魅力的なものであった。原山氏は最近、「metabolic bias: lipid structures as determinants of their metabolic fates (Biochimie 215, 34-41, 2023)」という新たな概念を提唱している。これは、細胞個性を構成するユニークな脂質組成は、遺伝子によってのみ定義されるのではなく、その基質となる脂質構造がその「流れ」のようなものを駆動するという概念である。その概念の具体例について、上述したエーテル型リン脂質の例にとり、そこからフェロトーシスだけでなく、イオンチャネルなどの薬理作用におよぼす分子メカニズムに迫る研究を紹介していただいた。発表後は、40分間ほど、終わらない質疑応答が繰り返されて、本学の教員や学生と活発な議論が行われた。その中でも、いくつかの質疑の中で、お互いが独自に思っていた疑問が解決されるようなディスカッションがなされたりと、次につながる有意義な場になったと考えられる。
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