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【2024.8.6 GIR公開セミナー報告】Dr. Hiroaki Matsunami “From Molecules to Senses: The Science of Odor Recognition”

イベント報告
2024.8.8

◆講演者: Dr. Hiroaki Matsunami (米国、デューク大学 School of Medicine、教授)
◆講演タイトル:”Hydrological extremes and climate change at the global-scale”
◆日時:2024年8月6日(火)14:30~15:30
◆会場:東京農工大学 小金井キャンパス 13号館 4階 L1342講義室
◆言語:英語
◆開催担当者:工学研究院  福谷 洋介 助教(グローバルイノベーション研究院 ライフサイエンス分野 福谷チーム
開催案内
◆参加人数:30人

講演概要

Duke大学医学部のHiroaki Matsunami先生をお招きし、GIR公開セミナーを開催した。Matsunami先生は哺乳類の化学受容、特に嗅覚を専門とされており、Nature誌を始め著名な学術誌に研究成果を報告されている。

今回のセミナーでは、哺乳類の嗅覚が数百種類ある哺乳類の嗅覚受容体で数十万種類あるニオイ分子を認識することができるメカニズムについて基礎的な内容から最新の研究成果について幅広い知見をご紹介いただいた。

前半では主に嗅覚受容体とニオイ分子の選択性の違いと知覚を生み出すパターン認識ついてご紹介いただいた。ニオイは構造が似たニオイ分子は似たニオイに感じることが多いが、化学構造が全然違うニオイ分子であっても似たニオイとして感じるニオイがある。産業的にも重要なムスク香に感じる様々なニオイ分子を例にとって、1つの嗅覚受容体がムスク香に感じる全ての化合物に応答することを発見された。これは、嗅覚受容体の柔軟な分子認識によって、ニオイの感じ方が決められている1例となる。また、ニオイを混ぜるとその感じ方が変わる例についても紹介いただき、末梢のニオイ受容体の応答パターンが中枢のニオイの知覚に最も影響することを再認識した。

後半では、嗅覚受容体の立体構造解析に向けた取り組みについてご紹介いただいた。まず、構造解析と分子シミュレーションの専門家のチームがそれぞれに役割を果たしたことで、構造解析に成功したという共同研究の重要性をお話いただいた。クライオ電顕構造解析から明らかになったヒト嗅覚受容体のカルボン酸に対する活性化機構について、詳細に教えていただいた。構造解析によって、細胞外ループがニオイ分子を包むポケットの蓋のような構造を取っていることが分かり、7本の膜貫通ドメインと細胞外ループを巧みに使用して小さいニオイ分子を包み込むことができる。さらに、新規の嗅覚受容体の匂い分子応答に関して、嗅覚受容体の構造解析をコンピューターシミュレーションによって解析を行う方法についてもご紹介いただいた。嗅覚受容体のニオイ結合ポケットは受容体が異なっても近い位置にある傾向があることなど、構造解析データを調べると分かってきている。
しかしながら、似ている分子構造なのにニオイの感じ方が違うメカニズムや、分子構造が全く異なるニオイ分子でもニオイの感じ方が近い理由などはまだ説明ができていない。一部の受容体の立体構造が明らかになったとしても、嗅覚の分子機構に関しては未解明な課題が多く残っていることを再認識する有意義なセミナーであった。

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