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【2024.6.6 GIR公開セミナー報告】Dr. Masuho Ikuo “The Ghrelin Receptor: Bridging Structure and Therapy”

イベント報告
2024.6.10

◆講演者: Dr. Ikuo Masuho (米国、サンフォードリサーチ 、アシスタント・サイエンティスト)
◆講演タイトル:”The Ghrelin Receptor: Bridging Structure and Therapy”
◆日時:2024年6月6日(木)(16:00~17:00)
◆会場:東京農工大学 ⼩⾦井キャンパス 13号館 4階 L1342講義室
◆言語:英語
◆開催担当者:グローバルイノベーション研究院 福谷 洋介 准教授(グローバルイノベーション研究院 ライフサイエンス分野 福谷チーム
開催案内
◆参加人数:30 人

講演概要

Sanford ResearchのMasuho博士は、Gタンパク質結合受容体(GPCR)という7回膜貫通型受容体の機能解析を専門としている。GPCRは細胞外の神経伝達物質やホルモン、光や味、ニオイなど様々な分子を受容して、そのシグナルを細胞内に伝えることができる重要なタンパク質である。GPCRは情報伝達の際に三量体Gタンパク質を介してシグナルを伝達するが、Masuho博士はこの三量体Gタンパク質の結合解離を利用したBRETセンサーによってGPCRの分子応答を定量的に評価する技術を有している。GPCRには様々な種類があり、多くの疾患に関与していることから、市販薬の半数近くがGタンパク質共役受容体のうちのいずれかを標的としている。Masuho博士は、この創薬ターゲットとなっているGPCRをターゲットに、遺伝子の個人差によって生じるGPCRのアミノ酸配列の違いによって生じるシグナル伝達効率や薬の効き方の違いを調べ、新たな創薬戦略や個別化医療としての活用を目的に研究を進めている。

本セミナーでは、現在Nature姉妹紙に投稿中のグレリン受容体に関する最新のご研究について紹介いただいた。グレリンは胃から産生されるペプチドホルモンであり、グレリンがグレリン受容体と結合すると食欲を増進させる。アナモレリンは日本国内で開発されたグレリン受容体活性化薬であり、癌悪液質および食欲不振の治療薬として使われている。Masuho博士と京都大学などの共同研究チームでは、アナモレリンや複数のアンタゴニスト結合状態のグレリン受容体のクライオEMの立体構造とグレリン受容体の生化学的解析によって、アナモレリンの作用機序と他のアゴニスト、アンタゴニスト分子との作用の違い、さらにはグレリン受容体の遺伝子の個人差に伴う薬の作用の違いを紹介いただいた。アナモレリンはグレリンよりもグレリン受容体に対する活性が高いこと、さらに脱感作が早いことなどが解明された。さらに、遺伝子配列の個人差は、本来活性化するはずの薬が拮抗薬として働いてしまうことなどが実験的に明らかになり、副作用の発生機序や遺伝子レベルの違いであることがあることを紹介いただいた。
創薬戦略や疾患治療の際に、標的とする受容体遺伝子の解析による適切なオーダーメード治療の重要性をお話いただき、今後の膜受容体に関する研究における重要性を共有する機会となった。

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