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【2024.1.11 GIR公開セミナー報告】Dr. Tatsuya Amano “生物多様性保全における言語の壁:その影響と解決策”

イベント報告
2024.1.15

◆講演者:Dr. Tatsuya Amano (オーストラリア、クイーンズランド大学、UQ Amplify Senior Lecturer / Deputy Director)
◆講演タイトル: “生物多様性保全における言語の壁:その影響と解決策”
◆日時:2024年1月11日(木)  13:00~14:30
◆会場:東京農工大学 府中キャンパス 第1講義棟2階23講義室
◆言語:日本語
◆開催担当者:赤坂  宗光 教授(グローバルイノベーション研究院 食料分野 小池チーム
開催案内
◆参加人数: 30名

講演概要

 講演は自己紹介を兼ねた、Amano氏の学生時代の研究から現在取り組んでいらっしゃる研究テーマに至るまでの研究経歴の紹介から始まった。氏の研究が行動生態学から、マクロ生態学、そして科学の在り方を問うメタサイエンスへと展開された経緯の説明があった。その後、本講演の主題である、「言語の壁」に注目する理由・経緯、なぜ言葉の壁に取り組む意義の説明の後、特に重点的に取り組んでいる3要素[グローバルなエビデンスの集約(global synthesis)、各地域へのエビデンスの適用(local application)、そして研究者にとって最も重要である、エビデンスの生成( generation of evidence =論文公表)]について、現状として政策の意思決定に非英語・英語での科学的知見が使われた程度を定量化した結果に基づき、非英語で発表された成果が果たす役割、非英語の科学的知見を無視することの帰結について、紹介があった。また、非英語ネイティブ研究者が知見を創出する際に抱えている壁の程度を定量化した結果をお示しくださった。この結果は、非英語ネイティブ研究者が、論文公表の多くの過程で、英語ネイティブな研究者よりも高いハードルを越える必要があることが示された。さらに、こうした言語の壁を越えるための、学術コミュニティの在り方や個人としての対応方法としてのAIの活用やの活用が抱えうる新たな問題(言語間のAIの質の違い、ツールは有償であるため生じる収入の壁、著作権の問題(学習機を使うとき、出力の著作権))についても紹介があった。最後に、これらの状況は、One-way mirror in the room(非英語ネイティブ研究者は認識しているものの、英語ネイティブ研究者は存在を理解していない問題であることを示すAmano氏の造語)であり、これらの解決にこれからも取り組んでいくことを述べられていた。講演終了後は多くの質疑が聴衆の教員・学生からでて活発な議論が行われた。本講演は、本チームの研究課題の目的の一つである生物多様性の保全に限らず、かなり広範な分野において研究を進める者の立ち位置を認識させ、個々が感じている壁が各人の資質によらず多くの研究者が共通して抱えるものであることを理解できたという点で、とても勇気づけられる有意義な講演であった。

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