メニュー
◆講演者:Dr. Roland Perry (英国、ハートフォードシャー大学、客員講師)
◆講演タイトル: “Learning from nematology history for future sustainable crop production”
◆日時:2023年9月7日 (木) 15:15~16:15
◆会場:法政大学 小金井キャンパス 東館 E201番教室、Zoom
◆言語:英語
◆開催担当者:豊田 剛己 教授(グローバルイノベーション研究院 食料分野 豊田チーム)
◆開催案内
◆参加人数: 125名
講演概要
Roland Perry教授はNematology誌の編集長を約20年間務められている線虫研究の大家である。今年は日本線虫学会の年次大会を東京農工大学が主催したため、年次大会において、「線虫学の歴史から学ぶ持続可能な作物生産体系」 Learning from nematology history for future sustainable crop productionと題するシンポジウムを企画し、Perry教授にご講演頂いた。オンライン参加を含めて100名以上が参加された講演会では、線虫研究の方向性に大きな変化があり、農薬を用いた化学防除や微生物を用いた生物防除の重要性が相対的に低下する一方、抵抗性、遺伝子機能、行動解析、対抗植物に関する研究の重要性が高まっていると紹介した。ついで、ポストゲノムの方向性として、バイオインフォマティクスやIn silico研究(コンピューター上でのモデリングやシミュレーション)の重要性、および、線虫の生理学・生化学・行動学の重要性についても紹介された。また、線虫研究の主な駆動力は環境にやさしい作物管理であり、そのためには、過去の研究も大いに再認識されるべきである。具体的には、孵化促進物質に関する過去の研究は、線虫の行動を制御する新たな化学物質の探索源になる。新たな視点としては、ネコブセンチュウの重要性である。この線虫群は熱帯地域を好むが、地球温暖化により生息域が拡大しているという。その中でも、Meloidogyne chitwoodiとM. fallaxは宿主域が広く、増殖能が高いために、多くの作物に経済的な被害を及ぼしており、これらの防除が今後より一層重要になるとの見解であった。
線虫研究は世界中で発展してきたが、その中で、佐賀大名誉教授の石橋先生によるダイズシストセンチュウの孵化行動に関する研究、北海道大の正宗名誉教授によるダイズシストセンチュウの孵化促進物質の同定に関する研究はインパクトが大きかったという。孵化促進物質に関する研究は、現在も北海道大およびアムステル大で継続し、複雑な生合成過程の解明や新規活性物質の探索が行われている。講演後の質問では、化学防除はこれからも最重要ではないかという反論があった。相対的な重要性との説明であったが、Farm to Folk戦略など、世界の趨勢は減農薬である。また、気候変動は線虫の生息域や被害に大きく影響する可能性があり今後注視していく必要があるというのが結びであった。
このページの上部へ