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◆ Dr. Richard Kormelink (オランダ、ワーゲニンゲン大学、准教授)
◆講演タイトル: “Plant viruses: a biological-mechanistic and evolutionary perspective on their default status”
◆日時:2023年9月29日(金) 16:00~17:00
◆会場:東京農工大学 府中キャンパス 2号館 2 階 22教室
◆言語:英語
◆開催担当者:福原 敏行 教授(グローバルイノベーション研究院 ・食料分野 福原チーム)
◆開催案内
◆参加人数: 50名
講演概要
GIR食料分野・福原チームでは、オランダ・ワーゲニンゲン大学からRichard Kormelink准教授をお迎えして、GIR公開セミナーを対面(農学部2号館22講義室)で開催した。Kormelink先生は、植物病理学・ウイルス学を専門とし、植物のウイルス感染防御機構研究の第一人者であり、モデル植物シロイヌナズナやトマト・トウガラシなどを用いた研究で優れた成果を報告されている。
従来の植物ウイルスの研究は、作物・野菜や花卉に病気を引き起こし、それらの収量や品質に悪影響を及ぼすウイルスの防除を主要な目的として、それら病原体ウイルスの複製機構・伝播機構・宿主域さらに宿主植物の感染防御機構を中心に研究が進められてきた。しかしながら近年の、次世代シークエンス技術を中心とした技術革新により、健全な(病徴が無い)作物や野生植物からも多種多様なウイルスが不顕性感染(持続感染)していることが明らかになってきた。Kormelink先生は、植物ウイルスが宿主植物に対して病気を引き起こさず不顕性感染(持続感染)する場合の宿主植物のウイルスに対する応答機構について最新の知見を報告された。特に、宿主植物のRNAサイレンシング機構とウイルス感染防御機構(不顕性感染)の関連について、最新の研究成果を報告された。また、ウイルスゲノムDNAが宿主植物ゲノムDNAに挿入され内在ウイルス化している事例から、宿主植物が内在ウイルスを制御する機構について報告された。さらに、不顕性感染したウイルスや内在ウイルスが宿主植物に乾燥耐性等の利益をもたらす興味深い研究成果についても報告された。
このように、本セミナーは、植物ウイルスの病原体という従来のイメージを覆し、宿主植物の生存環境や宿主植物との組み合わせにより、ウイルスは病原体から相利共生体にもなりうることを提唱する興味深い最先端の研究内容であった。セミナーには、佐々木先生(植物ウイルス学)・小松先生(植物ウイルス学)・森山先生(菌類ウイルス学)・松下先生(植物病理学)・仲井先生(昆虫ウイルス学)・安達先生(作物学)および学生(大学院生)を合わせて約50名の参加者があった。セミナー終了後には、教員・大学院生から多数の質問および活発な議論が交わされ、終了予定時間を大幅に超えた有意義なセミナーとなった。
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