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◆Dr. Susanne Lackner (ドイツ、ダルムシュタット工科大学、教授)
◆講演タイトル: “Impact of scouring on Membrane-aerated biofilm reactor (MABR) operation”
◆日時:2023年9月26日(火) 15:00~16:30
◆会場:東京農工大学 小金井キャンパス 科学博物館 3階 講堂、Zoom
◆言語:英語
◆開催担当者:寺田 昭彦 教授(グローバルイノベーション研究院 「栄養塩マネジメント学」拠点)
◆開催案内
◆参加人数: 28名
講演概要
排水処理施設で消費される約半分のエネルギーは、排水中の汚濁物質を酸化分解するために必要な酸素を溶解させる曝気という工程で消費される。曝気工程の省エネ化・低コスト化は、排水処理システムの運転コスト削減だけでなく、二酸化炭素フットプリントの削減にも貢献できる。
本GIRセミナーでは、上記技術で著名な成果を挙げているドイツ・ダルムシュタット工科大学のSusanne Lackner教授をお招きし、曝気工程の運転コストを大幅に削減可能な、膜通気型バイオフィルムリアクター(Membrane-aerated biofilm reactor; MABR)の開発や、形成される微生物の凝集体であるバイオフィルムの特性、バイオフィルムの機能維持方法に関する講義を行って頂いた。
まず、MABRにおいて曝気工程を大幅に削減できる機構について丁寧にご説明された。特にMABRでは、電子受容体である酸素がバイオフィルムの深部から供給され、電子供与体である排水の有機物やアンモニアが供給方向と逆を取る、対向拡散方式を利用している点が、他のバイオフィルムリアクターの構造と大きく異なる。このようなユニークな対向拡散方式は、バイオフィルム内の微生物群集構造の組成とその活性に大きな変化をもたらし、効率的な酸素供給と微生物反応を円滑にされる。図を用いながら、このような特徴をわかりやすくご説明頂いた。
次に、MABRの課題として、バイオフィルムの肥大化を挙げられた。バイオフィルムの厚みを制御することにより、バイオフィルムリアクターの性能向上が期待できることを、数学モデルに基づいたシミュレーション結果を例にご紹介頂いた。さらに、このような研究成果より、バイオフィルムを制御するための運転操作法についてご紹介され、MABRが排水処理分野に広く普及されていくための今後の道程について説明された。
質疑応答では、研究室規模のバイオフィルム内の微小空間での微生物群集構造とその機能に関する学術的なものから、実用化に向けた管理項目の同定、といった実用性の高いものまでおよび、それらの質問に対し、Lackner教授は真摯にご回答されていたのが印象的であった。本セミナーを通し、MABRが学術的にも実用的にも有望な技術であることを学ぶことが出来た。
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