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◆講演者:Dr. Tatsuya Amano(オーストラリア、クイーンズランド大学、リサーチカウンシル・ フューチャーフェロー)
◆講演タイトル:”エビデンスに基づいた保全:その役割と課題”
◆日時:2023年1月30日(月)
◆会場:Zoom
◆言語:日本語
◆開催担当者:赤坂 宗光 教授 (グローバルイノベーション研究院 食料分野 小池チーム)
◆開催案内
◆参加人数: 19名
講演概要
オーストラリア、The University of QueenslandのTatsuya Amano先生をお迎えして、GIR公開セミナーを開催した。Amano先生は、保全科学を専門とし、Nature誌やその姉妹誌に国際的に注目の高い研究を数多く発表され、その成果は複数回にわたり、英国放送協会(BBC)をはじめ世界各国で紹介されるなど、保全科学分野で国際的に注目される研究者の一人である。今回のセミナーでは、生物多様性が置かれている世界的な現状についての俯瞰的なお話の後、特に最近、力を入れておられる保全施策の実施の上での科学的根拠(エビデンス)の利用の重要性や、その利用の上で課題について広範にご紹介いただいた。より具体的にはまず、生物多様性保全を進めるうえでの科学者の役割として、科学的エビデンスの創出・集約・提供があることをご説明いただいた後に、科学的エビデンスが実際の保全施策に役立った事例として、南アジアにおけるハゲワシの減少の原因が家畜用の獣医薬であるジクロフェナクにあることが示され、その使用の禁止後に、インド・ネパールでのハゲワシの個体数が回復したという事例などをご紹介いただいた。その後、科学者の役割として年間1万件の論文が生み出されている現状を踏まえると、エビデンスの創出だけでは不十分であり(成果が埋もれてしまうため)エビデンスの集約も大事になっていることをご指摘くださった。その具体的な事例としては、新型コロナ感染症の感染拡大に伴うイギリスでのマスクの使用を求める判断について、rapid reviewという手法を用いてマスクの効果を集約し、その結果が政策に影響を及ぼしたの紹介くださった。さらにエビデンスを意思決定者へ提供するうえでは簡単にアクセス・利用可能な方で提供する必要があることについて事例を交えてご指摘くださった。その後、科学的エビデンスの利用の障壁となっている言語の障壁について、なぜ言語の障壁が問題であるかおよびその障壁が我々日本人を含めた非英語話者が英語での学術成果公表にどのような形で表れているかについて、定量的な調査結果としてお示しいただいた。この成果は、該当学術分野である保全科学の進展だけでなく、GIRでの研究課題について国際的に進展させるうえで理解すべき実態の理解という意味でも進めるうえで極めて示唆に富んだ内容であった。これらの講演ののちに聴衆からの質問に応じる形で積極的な議論が行われ、教員およびこれから次世代を担う学生にとっても刺激と示唆に富んだセミナーとなった。
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