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◆講演者:Dr. Wei-Li Hsu(台湾、国立中興大学、教授)
◆講演タイトル:”The Current Status of Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome Infection in Taiwan”
◆日時:2023年1月16日(月)
◆会場:東京農工大学 府中キャンパス 新4号館3階 4-32号講義室、Zoom
◆言語:英語
◆開催担当者:竹前 等 特任講師 (グローバルイノベーション研究院 ライフサイエンス分野 黒田裕ユニット)
◆開催案内
◆参加人数: 18名
講演概要
国立中興大学のWei-Li Hsu教授をお迎えして、GIR公開セミナーを開催した。Hsu先生は、鳥インフルエンザウイルス、ヤギの風土病であるOrfウイルス、重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome: SFTS)ウイルスに関する研究を精力的に行っている。今回のセミナーでは、台湾におけるSFTSウイルス感染の現状及び、Hsu先生のグループが現在取り組んでいるSFTSウイルスの検出系の樹立、治療用試薬の開発に関する研究の最新データについてお話しいただいた。
SFTSウイルスは2011年に中国より報告されたダニ媒介性の新興感染症である。高熱、血小板減少症などの症状を伴い、致死率は約30%と高い。台湾では2019年にSFTSウイルスが最初に同定され、異なる遺伝子型のウイルスが動物(タイプA/C)とヒト(タイプB)で発見された。主要な媒介ダニであるフタトゲチマダニに関する報告は台湾ではないが、オウシマダニ、ヤマアラシチマダニなど他の種からSFTSウイルスRNAが検出された。反芻動物におけるSFTSウイルスRNA保有率は29.9%と高く、地理的に広く分布しており、中でも羊の保有率が最も高かった。
SFTSウイルス検出・診断のための標的たんぱく質として、Nucleoprotein (NP) と Glycoprotein (Gn) に着目したHsu先生の最新の研究成果について紹介いただいた。NPの組換えタンパク質は、大腸菌発現系により調製可能で、NP組換えタンパク質のオリゴマーを形成させることにより、高い抗原性を示すことが判明した。また、NP組換えタンパク質と抗NPモノクローナル抗体を用いて、ウイルスのNPまたは検体中の抗NP抗体の迅速検出が可能な2セットのラテラルフローアッセイの樹立に成功した。Gnの組換えタンパク質は、哺乳類細胞発現系を用いて調製され、抗体保有率の調査に利用可能であることを確認した。現在、Gnを標的とした治療用試薬の開発を行っている。
講演終了後には、聴衆からの質問が多数あり、活発な議論が行われた。Hsu先生のアグレッシブな研究姿勢に感銘を受けた学生も多く、非常に有意義なセミナーであった。
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