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◆講演者:Dr. Roy C. Sidle(キルギス、中央アジア大学、教授)
◆講演タイトル:”Dynamics in the Water Towers of the Pamir”
◆日時:2023年1月11日(水)
◆会場:東京農工大学 府中キャンパス 2号館 2-22 講義室、Zoom
◆言語:英語
◆開催担当者:斎藤 広隆 教授 (グローバルイノベーション研究院 食料分野 斎藤広隆ユニット)
◆開催案内
◆参加人数: 対面15名(オンライン10名)
講演概要
中央アジア大学教授かつ本学スーパー教授であるRoy Sidle博士をお迎えして,GIRセミナーを開催した.「Dynamics in the Water Towers of the Pamir」というタイトルで,気候変動がSidle博士の所属する中央アジア大学の位置する「世界の屋根」とよばれるパミール山岳地帯の水循環に与える影響について講演していただいた.他のアジア山岳地帯と異なり,パミール地帯から流れる河川は直接海洋へ流れ出るのではなく,アムダリヤ川へ合流し,その後乾燥地帯などを通過しアラル海へと流れ,パミール山岳地帯の源流が下流域の生活を支えている.そのため,気候変動が源流に与える影響を把握することの重要性が指摘された.
講演では,気候変動が山岳地帯の水資源に与える影響について,平地と比較して人為や農業などにより複雑なものとなるとして,河川の水源となる降雪・降雨・氷河・永久凍土の長期的な変動や,標高毎の違いについてデータが示され,平地での議論されている気温や降雨量の変化が,山岳地帯では標高によってもその傾向は大きく異なることが紹介された.さらに,大きな不確実性の要因の一つとして,永久凍土の解ける量を把握することの難しさについての言及があった.永久凍土はその分布を予測するモデルもあるが,高山地帯での永久凍土の分布については実データが乏しいためモデルの検証も難しく,今後,リモートセンシングデータと組み合わせることでより正確な永久凍土の分布を求めるための研究を進める必要があるとの指摘があった.また,衛星データなどの調査の結果,地域に広く存在する氷河については,河川との連続性が乏しい氷河も多く,河川を涵養する水資源として,必ずしも重要な役割を果たしておらず,その点多くの誤認が生じているとした.一方,氷河の解ける速度はあがっていても,降雪量が増えた結果として,必ずしも氷河の減少にはつながっていない面もあるとのことであった.
このようなことを踏まえ,重要なこととして,気候変動がパミール地域のような山岳地帯の水循環に与える様々な影響を一つのモデルで説明することは難しく,山岳地域では標高毎のミクロなスケールのデータなども含めて検討した対応策が必要であるとの指摘があった.講演終了後には活発な議論がなされた.
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