メニュー
◆Dr. Roy C. Sidle (キルギス、中央アジア大学、教授)
◆講演タイトル: “Examining food security in High Mountain Asia through a broader lens”
◆日時:2022年11月22日(火) 15:00~16:30
◆会場:府中キャンパス 2号館 2-22 講義室、Zoom
◆言語:英語
◆開催担当者:斎藤 広隆 教授 (グローバルイノベーション研究院 食糧分野 斎藤ユニット)
◆開催案内
◆参加人数: 33名
講演概要
中央アジア大学教授かつ本学スーパー教授であるRoy Sidle博士をお迎えして,GIRセミナーを開催した.「Examining food security in High Mountain Asia through a broader lens」というタイトルで,高山地帯における食料安全保障について,食料生産や生物多様性などの観点のみならず,高山地帯特有の気候特性や社会経済的観点を含む多次元的な視点から講演をしていただいた.話題としては,Sidle博士の所属する中央アジア大学のあるホログ(Khorog)が位置している「世界の屋根」と呼ばれるパミール高原を例として,高山地帯における水資源の問題,痩せた土壌の問題,斜面崩壊などの土砂災害に関すること,さらにはソ連時代の不適切な管理の影響まで幅広いものであった.また,パミール高原などの高山地帯における,食生活の多様性の欠如,微量栄養素欠乏さらには発育阻害についての言及もあった.したがって,パミール高原における食料安全保障を理解するには,単に食料生産改善にとどまらず,貧困問題,地球規模の環境問題や気候変動,ウクライナでの戦争のような社会経済活動を含めた問題として理解することが必要であるとの主張であった.
具体的な話の中では,たとえば気候変動が高山地帯の食料安全保障に与える影響として,たとえば夏期の気温が上昇し降雨が増加する地点では生産性の向上が見込まれ,新たな農地の開拓につながる可能性がある一方で,予期せぬ害虫や外来植物の侵入や伝統的な農場管理方法が崩れるなどの懸念があるとした.また,水資源としては雪解け水に頼っており,気候変動に伴ってこれら水資源が枯渇する可能性も指摘されており,切実な問題として,現在広く使われている素掘りの簡易的な灌漑用水路にかわる適切な水管理が求められているとした.また,衛星データなどの調査の結果,地域に広く存在する氷河については,農業用の水資源として,必ずしも重要な役割を果たしておらず,その点多くの誤認が生じているとした.また高山地帯での食料安全保障を議論する上で,重要な論点として,土砂災害や土地の劣化などがあり,適切な土地管理の重要性について解説があった.
本セミナーでは,高山地帯における食料安全保障について講演をしていただいたが,日本などの高山地帯でなくても食料安全保障問題においては,科学的なデータや知見をもとに議論すること,また,地元の住民を巻き込んだ対応が重要であることの指摘もあった.講演終了後には活発な質疑がなされ大変有意義なセミナーとなった.
このページの上部へ