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◆Dr. Richard J. Simpson (オーストラリア、ラトローベ大学、教授)
◆講演タイトル: “Contribution of extracellular vesicles (EVs) to the epithelial-mesenchymal (EMT) program: functional insights into cancer progression”
◆日時:2022年11月22日(火)
◆会場:Zoom
◆言語:英語
◆開催担当者:天竺桂 弘子 教授 (グローバルイノベーション研究院 ライフサイエンス分野 池袋ユニット)
◆開催案内
◆参加人数: 30名
講演概要
Richard J. Simpson先生をお迎えしてオーストラリアと日本の参加者をZoomで接続し、GIRセミナーを開催しました。Simpson先生は、生物および生化学分野において” Highly Cited Researcher”に選出された、分野を牽引する第一人者です。Simpson先生は、がんの病態進行におけるエキソソーム生物学を専門としており、特に大腸癌を対象とした疾患進行の分子メカニズムと、組織浸潤のバイオマーカーの探索に力を注がれています。
本講演では、はじめに、上皮間葉転換が、胚形成、創傷治癒、およびがん悪性進行に関与すること、そのプロセスが、間葉系関連遺伝子発現を活性化するシグナル伝達ネットワークと転写因子によって定義されていることを紹介いただきました。上皮間葉転換は、エキソソームや微小小胞などの細胞外小胞が仲介することや、がん診断のバイオマーカーへの適応についての研究背景をご紹介いただきました。次に、細胞から放出される小胞である“細胞外小胞”について、その由来や特徴について詳細にご説明いただきました。そして、それらの単離および特性解析に用いる方法と、最新の手法もご紹介いただき、疾患における細胞外小胞内に含まれているタンパク質成分がバイオマーカーとして役立ち、それを用いれば癌の早期診断や、転移の予測が可能なことを概説されました。その例として、in vitro上皮間葉転換モデルとして、発癌性 H-RasG12V (21D1 細胞) で形質転換された Madin-Darby イヌ腎臓 (MDCK) 細胞を使用して、エキソソームと微小小胞の比較プロテオミクスおよび機能分析を示されました。そして、これらを含んだ細胞の形態機能特性をクライオ電子顕微鏡を用いて調べた結果を紹介されました。具体的には、MDCK 細胞は高度に分極した丸石のような形態を持っているのに対し、21D1 細胞は間葉特性/紡錘形の形態を持っていることが示されました。最後に、がん浸潤を評価するいくつかの評価方法を用いて、MDCK 細胞が上皮間葉転換の重要な特徴を有していると、遊走および浸潤能力を獲得することを実験データを交えて紹介いただきました。上皮間葉転換プロセスおよび癌の進行におけるそれらの潜在的な役割に関する新しい洞察についても、最新のデータを用いて解説されました。
本講演には本学大学院生および学部2、3、4年生に加えて、工学部および農学部に所属する教員、他大学の教員、学部学生、大学院生、企業研究者等も多数参加し、最新の研究成果を拝聴しました。また、研究者を中心とし、活発な議論が交わされました。さらには、農工大外部から15名の参加がありました。セミナー終了後も少し時間を取り、個人的な質問の場も設けたところ、他大学教員や本学学生がSimpson先生に質問する様子が見られ、教員だけでなく本学の学生に対し、大きな刺激を与えた大変良い機会になりました。外部に公開したことで、外部研究者も多く参加し、セミナーは成功に終わりました。来年度は農工大で対面のセミナーを開催することをSimpson先生と約束し、閉会しました。
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