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◆Dr. Karl Ritz (英国、ノッティンガム大学、名誉教授)
◆講演タイトル: “Soils in the Anthropocene: challenges and potential routes to their sustainable management”
◆日時:2022年10月12日(水)
◆会場:東京農工大学 小金井キャンパスBASE 本館 2 階セミナー室
Zoom
◆言語:英語
◆開催担当者:豊田 剛己 教授 (グローバルイノベーション研究院 食料分野 豊田ユニット)
◆開催案内
◆参加人数: 32名
講演概要
Karl Ritz先生をお迎えして、GIR公開セミナーを開催した。Ritz先生は、土壌生態学を専門とされており、近年は、土壌学分野でもっともIFの高いQ1ジャーナルSoil Biology & Biochemistry誌の編集委員長を務めるなど、土壌生物学に関する世界のトップリーダーである。今回のセミナーは、「人間中心に見た土壌:土壌の持続的な管理に向けた課題と対策」というタイトルで、現状、生産性がもっとも重視され酷使される土壌の利用法を、今後、どのように変えていくのかについて、将来を担う若い学生さんに問いかける形で行われた。Zoomでも配信したため、西東京市で有機農業を実践する生産者の方も参加された。
まず、人類が巨大な脳を有する稀有な生物であること、それが故に、考えることがもっとも得意であり大切であると強調した。人類は、現在、かつてない大気中の二酸化炭素濃度下で生きており、これには産業革命以降、爆発的に増加した化石燃料消費が密接に関係し、それが原因で、過去80年間に地球の平均気温が1℃増加したことが紹介された。気候変動により主にアフリカ大陸では30%以上、生産性が低下しており、干ばつリスクが年々増加しているという。現代の高度文明社会の地球規模での破滅をどうしたら回避できるのか、それが最大の課題であるとの認識の下、土壌の有する生態系機能をどのように維持・管理していくのかについて様々な議論の本となる材料を紹介した。
歴史的には農業という産業は多くのカロリーと原材料を生み出すために行われ、気候変動をもたらし、需要が最優先で、生物システムを破壊し、化石燃料と数種類の植物種に過度に依存し、均一性を強調し、土壌を重視してこなかった。これらはすべて持続性に乏しいため、すべて変更する必要がある。将来にわたり、農業は多くの食料と原材料を供給する必要があるため、そのために、気候変動の緩和に寄与し、機能的なトレードオフのバランスをとり、生物システムを活用し、化石燃料への依存度を下げ、幅広い植物種を活用し、多様性や不均一性を重視し、土壌を大切に扱うことが重要であると説いた。そのための新しい農業体系の1つが再生農業(regenerative agriculture)で、多様性・家畜との統合・土壌撹乱の最小化・土壌構造の保護・生きた根の維持の5つが主要原理という。
講演会の最後には、聴衆からの質問が多数あり、教員のみならず多くの学生に刺激を与える非常に有意義なセミナーであった。
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