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◆Dr. Hiroaki Matsunami (米国、デューク大学 School of Medicine、教授)
◆講演タイトル: “The science of smell”
◆日時:2022年7月26日(火)
◆会場: Zoom
◆言語:英語
◆開催担当者:村岡 貴博 教授 (グローバルイノベーション研究院 ライフサイエンス分野 福谷ユニット)
◆開催案内
◆参加人数: 25名
講演概要
Duke大学医学部のHiroaki Matsunami先生をお招きし、GIR公開セミナーをオンラインにて開催した。Matsunami先生は哺乳類の化学受容、特に嗅覚を専門とされている。今回のセミナーでは、数百種類ある哺乳類の嗅覚受容体が、無数にあるニオイ分子の中のうちのどの分子に応答するかについて研究室で確立されている網羅的探索法や、嗅覚受容体の立体構造解析に関する進捗について紹介していただいた。
マウスでは約1200種類の嗅覚受容体があるが、どのニオイ分子がどの受容体を活性化するか1つずつ調べることは難しい。そこで、マウスにニオイを嗅がせ、そのニオイに対して嗅覚受容体が応答したときに、その嗅覚受容体が発現する嗅覚神経細胞内でリン酸化されるタンパク質を目印にして、回収する、その嗅覚神経細胞のトランスクリプトーム解析を行うことで、嗅がせたニオイ分子に応答する嗅覚受容体を同定できる。この手法を利用して、最近、化学構造の異なる20種程度に対して、応答するマウス嗅覚受容体の相関関係を網羅的に解析された。その結果、比較的複数のニオイ分子に応答する嗅覚受容体は少なく、多くの嗅覚受容体は限定されたニオイ分子に応答することが明らかになった。この技術を応用することで、ニオイ分子と応答する受容体の組み合わせの解析が進み、将来的にはニオイ分子から応答する受容体の予測ができるようになるかもしれない。
後半では、嗅覚受容体の立体構造解析に向けた、最新の知見をご紹介いただいた。哺乳類の嗅覚受容体は、タンパク質が不安定であり、タンパク質精製や立体構造解析ができていない。そこで、アミノ酸配列を基に安定性の高い嗅覚受容体を構築された。クライオ電子顕微鏡での構造解析の進捗データをご紹介いただいた。嗅覚受容体の立体構造は、既知の他のGタンパク質共役型受容体と異なる領域もあることが分かった。
現時点では、ニオイ分子が結合した状態の立体構造解析は至っていないということであるが、今後の展開が期待される。
公演終了後には聴衆からの多くの質問があり非常に有意義なセミナーであった。
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