メニュー
◆Dr. Hirotsugu Hiramatsu (台湾、国立陽明交通大学、准教授)
◆講演タイトル: ““Structure analysis of amyloid fibril β-sheets using vibrational spectroscopy”
◆日時:2022年7月22日(金)
◆会場: 東京農工大学 小金井キャンパス 新1号館グリーンホール
◆言語:英語
◆開催担当者:村岡 貴博 教授 (グローバルイノベーション研究院 ライフサイエンス分野 川野チーム)
◆開催案内
◆参加人数: 23名
講演概要
Hirotsugu Hiramatsu先生をお迎えして、GIR公開セミナーを開催した。Hiramatsu先生は、赤外やラマンなどの振動分光測定とその解析を専門とし、振動分光を駆使した詳細な生体分子の構造解析を行っている。今回のセミナーでは、赤外分光法の基礎原理から応用について、特に自己集合するペプチドの構造解析について詳細に解説いただいた。
ベータ2ミオグロビンは、変性しアミロイド線維を形成する。線維を形成する最小構造として、残基番号21から29の9アミノ酸からなるペプチドが知られる。このペプチドの繊維状集合体を赤外分光法により解析した結果、酸性から中性付近ではanti-parallel型βシートを形成するのに対し、塩基性条件になるとparallel型βシートへ変化することが示された。各アミノ酸残基に選択的に13C同位体を導入することによって、換算質量変化の効果により残基レベルでの詳細な構造解析が可能であることをご説明された。ペプチド中のどのアミノ酸範囲がβシート形成に寄与しているのかを解明することが可能であり、その精度に感銘を受けた。また、解析したベータ2ミオグロビン部分構造が、同一アミノ酸配列でparallel / anti-parallelβシートを形成する珍しい特性を示すことを見出したことから、両構造の安定性を比較した。同一分子を用いることから、厳密に同じ換算質量として構造安定性を比較することができる。βシート由来の振動バンドの振動数の違いから、parallelβシートがより安定であることが示された。さらに、詳細な解析から、1つのβシート集合体の中に、parallel型とanti-parallel型βシートが共存することはほとんど無いことも示された。タンパク質を構成する主要な部分構造であるとともに、疾患とも関連するβシート型集合体について、振動解析から高精度な構造解析が可能であることを説明いただいた。
講演の後半では、赤外分光法に加えて、ラマン分光法や円二色性分光法を組み合わせた構造解析についてご紹介いただいた。ジスルフィド結合の有無などについての情報を得ることができ、これら分光解析が、βシート型集合体の全体構造を解析する上で、非常に有用な手法であることを紹介いただいた。
講演終了後には、教員だけでなく学生からも多く質問があり、様々な分野の研究者が興味を持つ有意義なセミナーであった。
このページの上部へ