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2021.12.27
Dr. Peter Kitin(米国、ワシントン大学、School of Environmental and Forest Sciences、リサーチサイエンティスト)
Dr. Widyanto Dwi Nugroho(インドネシア、ガジャマダ大学、Department of Forest Product Technology、准教授)
Dr. Jong Sik Kim(大韓民国、全南大学校、Department of Wood Science and Engineering、助教)
◆日時:2021年12月23日 (木)
◆会場:Zoom
◆言語:英語
◆開催担当者:半 智史 准教授 (グローバルイノベーション研究院 食料分野 半チーム)
◆開催案内
◆参加人数: 29名 後日google classroomで配信
講演概要
Peter Kitin先生、Widyanto Dwi Nugroho先生、Jong Sik Kim先生をお迎えして、GIR公開セミナーを開催した。今回はオンライン開催ということもあり、我々のチームの外国人研究者3名の先生方にそれぞれ話題提供をしていただき、一緒に議論を行うこととした。
Kitin先生は、木材解剖学および樹木生理学の分野で最もアクティビティの高い研究者の一人であり、顕微鏡を中心とした様々なイメージング技術を駆使した研究を専門としている。今回のセミナーでは、アセチル化による保存処理を行った木材中のミネラルの拡散についての走査電子顕微鏡(SEM)とエネルギー分散型X線分析(EDX)を組み合わせた解析、藻類による細胞壁の分解メカニズムを理解する上で重要な分解過程の光学顕微鏡および走査電子顕微鏡解析、収束イオンビーム(FIB)による加工とSEM観察を組み合わせた三次元での細胞壁のporosityに関する解析についてお話いただいた。
Nugroho先生は、熱帯産樹木の木部形成および材質特性分野のスペシャリストであるとともに、工芸品や遺跡出土木材など幅広い材料の樹種識別に関わる研究を専門としていることから、熱帯産木質バイオマスの多様性を熟知している。今回のセミナーでは、樹木の重力方向の変化という刺激に対する応答であるあて材の形成に関する基礎について概説いただいた。さらに、熱帯産樹木における引張あて材の形成機構、特に植物ホルモンの一種であるジベレリンがどのように関与するのかについての研究成果に関して、さらには、傾斜処理を行ってからの姿勢回復において、引張あて材の幅が重要なのかそれともG層の厚さが重要なのかが、樹種によって異なるという多様性を示す研究成果についてお話いただいた。
Kim先生は、世界トップレベルの細胞壁成分の局在解析技術をもち、植物細胞壁科学の分野で活躍する若手研究者である。今回のセミナーでは、木材の生分解に関する基礎情報に加えて、水中に沈んでいた考古学的なサンプルについて、バクテリアおよび白色腐朽菌による細胞壁の分解について概説いただいた。さらに、免疫標識と透過電子顕微鏡観察を組み合わせた細胞壁中におけるリグニンや非セルロース性多糖類の局在解析に基づく、細胞のタイプや細胞壁の壁層によるバクテリアや木材腐朽菌に対する耐久性の違いについてお話いただいた。
講演終了後には参加者から多くの質問があり、大いに議論が盛り上がった。参加者の中には、樹木細胞生物学、バイオマス構造機能学、再生資源科学、生分解制御学といった木質科学の研究者や学生に加えて、材料科学の研究者も含まれており、それぞれの研究を進展させる上で重要な木質バイオマスの特徴に関する情報を共有することにつながった。教員だけではなく多くの学生に刺激を与える非常に有意義なセミナーであった。
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