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2021.7.29
Dr. Chris Bowler(フランス、パリ高等師範学校 (IBENS)、Ecology and Evolutionary Biology、グループリーダー)
◆日時:2021年7月28日 (水)
◆会場:Zoom
◆言語:英語
◆開催担当者:田中 剛 教授 (グローバルイノベーション研究院 エネルギー分野グループ 田中ユニット)
◆参加人数: 39名 後日google classroomで配信
◆開催案内
講演概要
令和3年7月28日に、Chris Bowler先生によるGIR公開セミナーを開催した。今回のセミナーはCOVID-19の影響によりBowler先生の来日がかなわず、Zoomによるオンライン開催となった。Bowler先生は、珪藻をはじめとする海洋プランクトンのゲノム解析を専門とされている。また、世界中の海洋環境における生物多様性や気候変動についての解析を行うTara Oceansプロジェクトを牽引している。今回のセミナーでは、Tara Oceansプロジェクトにより解明された海洋プラクトンの多様性と相互作用、および地球温暖化が海洋プランクトンをはじめとする生物群に与える影響について、豊富なデータを基に解説頂いた。
海洋に存在するバイオマス(生物量)の65%はプランクトンが占めており、海洋環境の生態系を理解する上で重要な存在である。海洋プランクトンの中には、カイアシ類などの多細胞動物プランクトン(0.1~100個体/L)、微細藻類(植物プランクトン)を含む単細胞の原生生物(10万~1000万細胞/L)、細菌・古細菌(1億~10億細胞/L)、ウイルス(10億~100億個/L)が含まれる。これらのサイズはナノメートル~センチメートルのスケールに分布しており、サイズ分布が非常に幅広いことが分かる。地球規模での海洋プランクトンの多様性解析を目的の一つとするTara Oceansプロジェクトでは、これらのサイズが全く異なる生物群を段階的にサンプリングするために、フィルタリング方法など様々な工夫が採用されている。
サンプリングされた海洋プランクトンは、高精度なイメージング解析と、大規模なシークエンス解析に供され、卓越した海洋プランクトンビッグデータが獲得された。得られたビッグデータの包括的な解析から、海洋環境における光合成の主役となる生物が珪藻であること、その珪藻と相互作用する全く未知の極微小な窒素固定細菌が存在すること、地球温暖化による海洋の酸性化が海洋プランクトンの殻を薄くするほどの影響を及ぼしていること、極地の生物叢が温度変化に最も敏感に影響を受けることなど、様々な知見が、これまでにない精度で蓄積されていることが紹介された。人類の活動による地球の環境変化が、海洋プランクトンの生態に重大な影響を及ぼしていることが、如実にデータで示されており、持続可能な社会の構築や生物多様性の保全などの重要性を改めて感じたセミナーであった。
講演の後半では質疑応答の時間が設定された。Tara Oceansプロジェクトがどのように気候変動のコントロールに寄与するかなど、学生から多数の質問があり、Bowler先生からひとつひとつの質問に対して非常に丁寧な回答があった。この質疑応答において活発な議論や意見交換がなされ、有意義なセミナーとなった。
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