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2021.3.5
講演者
Dr. Andrea C. Gore (Professor, Division of Pharmacology and Toxicology, The University of Texas, USA)
◆日時:2021年2月19日(金)
◆会場:Zoom
◆言語:英語
◆開催担当者:渡辺 元 教授 (グローバルイノベーション研究院 食料分野 渡辺チーム)
◆参加人数: 39名 後日google classroomで配信
◆開催案内
講演概要
今年度は新型コロナウイルス感染拡大のため、Dr. Andrea Goreを本学にお迎えすることができなかったので、Zoomを用いたオンライでのセミナーを開催した。約1年半前に講演していただいた内分泌攪乱物質の生体影響のメカニズム、特に中枢神経系の発達と行動に対する影響について、最近の成果を交えてわかりやすく紹介していただいた。
環境内分泌かく乱化学物質(EDC)は、ホルモンとその作用を阻害する。生命の重要な時期、特に発育中の胎児と乳児におけるEDCへの曝露は、発育中の脳がホルモンに対する感受性が高く、EDCの影響を受ける可能性が高いため、特に問題となる。
Dr. Goreの研究室では、2種類のEDCによる出生前暴露のラットモデルを使用している。その一つは、以前にさまざまな工業製品で使用されていたポリ塩化ビフェニル(PCB)混合物であり、も一つは現在も農業で使用されている防黴剤のビンクロゾリンである。これらの化学物質の発育中の子への影響を解析するために妊娠ラットに投与した。化学物質を投与された妊娠ラットから生まれたこれらのF1世代の雌雄ラットを用いて、発達期にEDCに暴露された結果、その後の成熟期のホルモンと行動、脳の分子レベルおよび細胞レベルなどがどのように変化し、機能的行動の表現型がどのように影響を受けたかを解析した結果が紹介された。
今回の講演では、新たな行動解析システムを開発し、ラットが配偶者を選ぶ際に嗅覚を用いていること、EDC曝露が成熟期のF1雌雄ラットの配偶者選びの行動に嗅覚の異常を介して影響を与えることを、動画を交えてわかりやすく解説した。さらにそれに関わると予想される神経経路とそのメカニズムに影響を与えることを示す神経解剖学的な最近の研究が紹介された。
Dr. Goreたちの研究は、PCBなどの化学物質への妊娠中の曝露が、曝露された個体の発達中の脳、神経内分泌系、生殖および社会的行動に生涯にわたる影響を与えることを示している。人間と野生生物などすべての生物がその持続性と遍在性のためにプラスチックなどを介して環境化学物質にさらされており、深刻な影響を受けている可能性をしてしている。
教員のみならず学外も含めて多くの学生も参加しており、講演の後、多くの質問があり、活発な質疑応答が行われた。
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