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2020.1.23
講演者
Dr. Patrice Simon (Professor, CIRIMAT Labolatory (Material Science), Paul Sabatier University, Toulouse, France)
◆日時:2020年1月16日(木)
◆会場:東京農工大学 小金井キャンパス 次世代キャパシタ研究センター
◆言語:英語
◆開催担当者:岩間 悦郎 教授 (グローバルイノベーション研究院 分野融合拠点 直井チーム)
◆参加人数: 25名
◆開催案内
講演概要
分野融合チームでは、Prof. Patrice SIMON (Paul Sabatier University Toulouse III, CIRIMAT, France)をお迎えして、公開セミナーを開催した。
スーパーキャパシタは、電解液中のイオンが電極表面に集まることにより電荷を蓄えるエネルギー貯蔵デバイス「電気二重層コンデンサ」の呼称である。電気二重層キャパシタのエネルギー密度の向上には、炭素電極の電荷蓄積容量と充放電電圧の双方を増大させることが必要不可欠である。近年、活性炭に代わる電極材料として、グラフェンやカーボンナノチューブなど新規ナノカーボン材料のキャパシタへの応用が期待され、日夜、開発研究が進められている。
SIMON 先生はヨーロッパ最大のリチウムイオン電池研究ネットワーク (Alistore-ERI) およびフランス電気化学エネルギーデバイス(キャパシタ)研究ネットワーク(RS2E) の代表者を務められるなど、本領域の第一線でご活躍されており、本セミナ ー で は “Electrochemistry at the nano scale: electrodes for energy storageapplications”と題し、電気化学キャパシタにおける最新研究についてご講演いただいた。
その中でも、1. EQCM 測定法を利用したグラフェンシート上におけるイオン吸着過程の解析、2. 有機電解液中における MXene 電極の電気化学特性の2点が、興味深い内容であった。
1つ目のトピックである、EQCM 測定法を利用したグラフェンシート上におけるイオン吸着過程の解析においては、水晶上に蒸着させた Au 上に均一に積層させたグラフェン電極を自ら開発し、それを用いた電気化学吸着結果が示された。まず 1 層のみの積層では、これまで想定されていた様な、電位ごとの単純なカチオン・アニオン吸脱着ではなく、イオンクラスターの再構成に起因する挙動が確認された。さらに 3 層まで積層させたグラフェン電極では、挙動が大きく変化し、イオン抵抗に起因する挙動が確認された。これは、グラフェン表面でイオン吸着するだけでは到底説明しえない結果であり、グラフェン層間へイオンが自由にアクセス可能性も示唆される驚くべき結果であるが、現在も引き続き解析中であるとのことであった。
2つ目のトピックである、有機電解液中における MXene 電極の電気化学特性では、導電率が高く優れた特性を発揮すると期待されるアセトニトリル(AN)ではなく、プロピレンカーボネート(PC)を用いた系において高容量・高出力特性双方を達成するという結果が示された。SIMON 教授らは昨年度からこの内容の解析に努めており、現時点では in situ XRD 解析から、PC 系では、充放電に伴うMXene 層間の膨張・収縮が 2.3Å 程度であり、Li イオンのみが自由に脱挿入していることを突き止めている。また、これら有機電解液中における電気化学特性や耐電圧性には、表面官能基、特に F および OH 基が大きく影響を与えていることを突き止めている。さらには Cl 基修飾や表面酸化された MXene の電気化学特性は、高速で可逆応答可能な理想的psuedocapacitive 特性を示すことを確認している。このように有機電解液中でも優れた電気化学特性を発揮することが確認された MXene であるが、一方では、MXene の高い導電率にも関わらず一定割合の導電助剤混合を必要とするという、課題・謎も示され、さらなる研究発展が期待される形で同講演内は終了した。
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