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2019.10.25
講演者
Dr. Patrick Rozier (University of Toulouse III – Paul Sabatier, France)
◆日時:2019年10月18日(金)
◆会場:東京農工大学 小金井キャンパス 次世代キャパシタ研究センター 2階多目的ホール
◆言語:英語
◆開催担当者:岩間 悦郎 教授 (グローバルイノベーション研究院 分野融合拠点 直井チーム )
◆参加人数: 29名
◆開催案内
講演概要
分野融合チームでは、Prof. Patrick Rozier (Paul Sabatier University Toulouse III, CIRIMAT, France)をお迎えして、公開セミナーを開催した。
Patrick Rozier先生は結晶化学を専門とされており、中でもX線による結晶や非結晶構造物質の解析に非常に強い研究者である。また、H26年度より5年連続でGIRキャパシタチームのメンバーとしてTUATに在籍し、in-situ XRD解析を主体とした研究を先導した実績がある。
本セミナーでは、「All Solid State Batteries : Review of issues and opportunities」と題し、近年研究が加速している「全固体リチウム電池」に関する最新動向を解説頂いた。近年、エネルギー問題解決の糸口として生産が加速しているリチウムイオン電池であるが、体積エネルギー密度の大幅な向上と安全性の両立を目的とした、全固体電池の研究開発が盛んに行われている。一方、新たな知見の蓄積により、これまで予見されていなかった問題点も報告されるようになった。今回行われたRozier先生のご講演では、固体電解質・負極・正極・負極/固体電解質界面・正極/固体電解質界面に別けて、各々の達成度・課題が示された。
Rozier先生のご講演の中で特に強調されたポイントは、「新規固体電解質の出現」と「正極/固体電解質界面における大きな課題」の2点である。全固体リチウム電池が既存のリチウムイオン電池に対して有する大きな利点は、(液体電解液では利用が諦めらている)リチウム金属負極の利用が固体電解質の導入によって、可能となりうる点である。これにより、理論上、体積・重量エネルギー密度の大幅に可能となる。特に近年では、液系電解液に匹敵する導電率を示す硫化物系固体電解質が報告されるようになり、上述のとおり研究開発が加速している。
一方で、正極/固体電解質界面の設計には大きな課題が残されていることが、講演内では強調された。全固体リチウム電池の正極には、リチウムイオン電池と同様にリチウム金属酸化物の利用が想定される。また、正極界面における良好な電子伝導パスの設計には、現状は導電性カーボンの添加が必須となっている。一方、硫化物系固体電解質は特にカーボンとの相性が悪く、酸化分解を引き起こすことが近年報告され始めた。この課題に対する明快な回答は現時点では報告がなく、真の全固体電池の普及を目指すには新たなブレイクするーが必要との事で講演は締められた。
例年通りであるが、講演後の聴講者から出てきた多くの質問に対し、Rozier先生も真摯に回答されたため、非常に活発な意見交換が行われ、充実した内容のセミナーであったといえる。
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