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2020.2.18
講演者
Dr. Ian Davies (Associate Professor, Curtin University, Australia)
◆日時:2020年2月12日(水)
◆会場:東京農工大学 小金井キャンパス 9号館505会議室
◆言語:英語
◆開催担当者:小笠原 俊夫 教授 (グローバルイノベーション研究院 エネルギー分野 小笠原チーム)
◆参加人数: 24名
◆開催案内
講演概要
オーストラリアのパースにあるCurtin大学のIan Davies先生をお迎えして、GIR公開セミナーを開催した。Davies先生は、計算力学や材料力学、機械材料などを専門とされており、応用分野では複合材料、粉体、セラミックス、コーティングなどの材料研究分野における著名な研究者のひとりである。本講演では、Davies先生が進めている材料力学・機械材料工学における数値シミュレーションの応用に関する概要と、数値シミュレーションによるいくつかの研究成果が紹介された。
はじめに、1993年代のスーパーコンピュータの性能と比較しながら、近年のGPU性能の著しい進歩について説明があった。ひきつづき材料力学・機械材料学の研究おいて、大学などでの研究環境に適したPythonをベースとする代表的なOpen sourceコードに関する紹介があった。Pythonを利用した計算パッケージやadd-on、グラフ作成のためのmatplotlib、汎用有限要素法(FEM)ソルバーABAQUSに匹敵する機能を有するCalculixなどについての説明があった。これらのOpen sourceとGPUの組み合わせにより、安価で高速な数値シミュレーションが実現可能であるとのことであった。
ひきつづき、上述の計算機環境を用いた研究として、(1) 粉体の充填、(2) 欠陥を有する脆性材料の破壊、(3) ハイブリット複合材料の材料設計、(4)水素バリアコーティング層の損傷解析、のシミュレーション事例が紹介された。粉体の充填シミュレーションでは、従来は粒子数105程度が限界であったのに対して、高速GPUの利用により粒子数106の計算が実施できるようになったことが報告された。粒子径の分布の影響も考慮された解析であり、興味深い手法である。欠陥を有する脆性材料の破壊については、欠陥寸法分布として正規分布を仮定したモンテカルロシミュレーションを行い、結果として破壊起点寸法が極値統計論で導かれる結果と一致することが示されており興味深いものであった。ハイブリッド複合材料の材料設計では、有限要素法と遺伝的アルゴリズムを融合したひとつの計算パッケージをPythonとCalculixを組み合わせて開発し、、材料構成の最適化計算を実施した例が報告された。また、コーティング層の損傷解析についても、FEM解析結果をもとに、き裂進展挙動を前進的に決定する方法によるシミュレーションを実施しており、収束性の高いき裂進展シミュレーション手法として興味深いものであった。
講演会最後には学生からの質問が多数あり、教員のみならず多くの学生に刺激を与える非常に有意義なセミナーであった。
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