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2019.12.13
講演者 Dr. Michał Boćkowski (Professor, Institute of High Pressure Physics, Polish Academy of Sciences (PAS), Poland)
◆日時:2019年12月6日(月)
◆会場:東京農工大学 小金井キャンパス 講義棟L0025教室
◆言語:英語
◆開催担当者:熊谷 義直 教授 (グローバルイノベーション研究院 エネルギー分野 田中チーム)
◆参加人数: 35名
◆開催案内
講演概要
Michał Boćkowski先生他2名の講師をお迎えして、GIR公開セミナーを開催した。Boćkowski先生は、結晶成長、特にⅢ族窒化物結晶の高圧下融液成長、常圧下気相成長で世界トップレベルの研究者の一人である。今回は、①Ⅲ族窒化物半導体のパワーデバイス応用、②化合物半導体開発史における熱力学の貢献、の講義に引き続き、③GaNバルク単結晶成長技術の講義をBoćkowski先生が担当し、高圧下融液成長、常圧化気相成長の基礎と最近の進展・現在の問題点について解説いただいた。
超高圧下融液成長(アモノサーマル法)は、GaN多結晶粉末を液化NH3内に設置し、3,000気圧以上かつ高温に保つことでGaNをNH3中に溶解させ、低温部に設置した種結晶上でGaNを再成長させる手法である。本手法はBoćkowski先生らのグループが最先端を走っており、現状、転位密度が最も低い結晶を成長可能である。講義では、得られる結晶の物性について詳細な解析結果を紹介いただいた。さらに、アモノサーマル法で成長したGaN結晶から作製した単結晶ウェーハ上へのGaN常圧気相成長(HVPE法)の結果についても紹介いただいた。HVPE法は東京農工大学が世界的に著名な拠点の一つでもあり、結果について活発な討論がなされた。アモノサーマル法で得られる結晶中の不純物が格子パラメータに与える影響がHVPE法を行う際に問題となることが指摘され、今後の取り組み方について多数のコメントがあった。
最後に、最近のトピックスとして、Boćkowski先生らの有する高圧炉を利用したイオン注入GaN結晶の高温回復アニールの研究が紹介された。GaN結晶の電導性制御のため、不純物イオンの注入と、引き続く高温アニールによる注入ダメージからの回復が世界的に試みられているが、常圧でGaNを1300℃以上に昇温するとN抜けによる結晶分解が生じるため注入ダメージからの完全回復が達成できないことが問題となっている。Boćkowski先生らは、GaNの圧力-温度(P-T)関係を基に、Mgイオンを注入したGaNを高圧でアニールすることで1500℃のアニールを可能とし、世界で初めてイオン注入によるp型発現を成し遂げた。本結果はGaNのパワーデバイス展開のキーとなることが予想される。
今回の1日のGIR公開セミナーは多くの学生だけでなく、近隣の大学の教員も参加し、聴講者に刺激を与える有意義なセミナーとなった。
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