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2019.10.4
講演者 Prof. David Kisailus (Materials Science and Engineering, University of California at Riverside, USA)
◆日時:2019年9月27日(金)
◆会場:東京農工大学 小金井キャンパス 11号館5階 L1153
◆言語:英語
◆開催担当者:新垣篤史準教授 (グローバルイノベーション研究院 エネルギー分野 新垣チーム)
◆参加人数: 32名
◆開催案内
講演概要
David Kisailus先生をお迎えして、GIR公開セミナーを開催した。 Kisailus先生は、材料科学を専門とし、UNESCO Chair of in Materials and Technologies for Energy Conversion, Saving and Storage (MATECSS)のメンバーや材料科学の専門誌Advanced Materials Interfaces誌の編集委員を務めるトップリーダーの1人である。今回のセミナーでは生物が作る硬組織の構造解析を通じて得られた知見を元にした材料開発や、光触媒や電池として利用可能な機能性ナノマテリアルの開発など、Kisailus先生が幅広く進められている研究について解説いただいた。
肉食性のシャコであるモンハナシャコは、銃弾を超える速度で捕脚を打ち出すことで、捕食対象となる貝などの殻を打ち破ることが知られている。一方で、この攻撃の際にシャコ自身の捕脚は破壊されない。これには捕脚部の構造が大きく寄与していることを紹介いただいた。具体的には、捕脚の外部は高度に結晶化したハイドロキシアパタイトから構成されるのに対し、内部は螺旋状に組織化されたキチン繊維から構成されており、このキチン繊維が衝撃の吸収に大きく寄与している。さらに、応用例としてキチン繊維の配置を模倣した炭素繊維を作成し、実際に衝撃吸収性能が増す、という結果を紹介いただき、材料開発における生物の構造解析の可能性に感銘を受けた。また、捕脚の表面は内部に空隙を持つハイドロキシアパタイトのナノ粒子から構成されており、この構造がガラス並みの強度を持ちながらコルクに匹敵する衝撃吸収性を粒子に与えていることを紹介いただいた。この他にもヒザラガイの歯や甲虫表皮などの硬組織が持つ微細構造が物性を決定づけること、それらの構造の制御にタンパク質が強く関連していることを紹介いただき、生命科学と材料科学の融合の重要性を説明いただいた。
さらに、光触媒に関連する研究として、可視光での励起が可能なTa3N5で構成される中空構造のナノマテリアル合成について紹介いただいた。通常のTa3N5と比較して表面積が大きく、内部で可視光が反射できる構造のため、効率的に励起でき、既製品と比較して強力な水質浄化性能を示すという結果に、微細構造の制御が機能性ナノマテリアルの性能に大きく影響を与えることを改めて学ぶことができた。
公演終了後には聴衆からの質問が多数あり、教員だけではなく多くの学生に刺激を与える非常に有意義なセミナーであった。
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