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2019.9.10
講演者
Dr. Akira Kawaguchi (National Agriculture and Food Research Organization (NARO), Japan) – “Biological Control for Grapevine Crown Gall by Nonpathogenic Rhizobium (=Agrobacterium) vitis Strain ARK-1”
Dr. Richard S. Nelson (Oklahoma State University / Noble Research Institute, LLC, USA) – “Viruses as Tools for Basic and Applied Plant Research”
◆日時:2019年9月3日(火)
◆会場:東京農工大学 府中キャンパス 50 周年記念ホール
◆言語:英語
◆開催担当者:佐々木信光 準教授 (グローバルイノベーション研究院 ライフサイエンス分野 佐々木チーム)
◆参加人数: 38名
◆開催案内
講演概要
農研機構の川口章先生とオクラホマ州立大学のRichard Nelson先生をお迎えし、GIRセミナーを開催した(遺伝子実験施設との共催)。川口先生は、土壌微生物を利用した生物防除に関する植物病理学研究において、日本農学進歩賞、日本学術振興会賞、日本学士院学術奨励賞など多くの賞を受賞されている新進気鋭の若手研究者である。また、Nelson先生は、顕微鏡を用いた植物ウイルスのイメージング解析や外来遺伝子の導入を目的とした新規ウイルスベクター開発を中心として植物病理学分野で活躍し、米国植物病理学会のウイルス委員会の委員長および多くのジャーナルのエディターやレフェリーを経験されている。
川口先生には、ブドウ根頭癌腫病の診断法を確立することをきっかけとして、病原性リゾビウムの病原性を抑制する非病原性リゾビウムARK-1を発見し、それを生物農薬資材に利用する研究へと結び付けてきた過程についてお話しいただいた。ARK1と混合することによって病原性リゾビウムの病原遺伝子virD2とvirE1の発現が有意に減少することを実験的に証明し、ARK1の応用的利用だけに留まらず、病気の発生における分子メカニズムの解明にも取り組んでいることが紹介された。
Nelson先生からは、タバコモザイクウイルス(TMV)の感染メカニズムの分子レベルでの研究から植物ウイルスによる遺伝子抑制法(Virus Induced Gene Silencing)の開発および新規有用遺伝子の探索に至る、幅広いトピックについてお話しいただいた。感染メカニズムについては、酵母ツーハイブリッドスクリーニング・BiFCタンパク質相互作用解析・共焦点顕微鏡観察などの実験結果から、液胞膜タンパク質の一種であるSNAREがTMV複製酵素と相互作用し、ウイルスの増幅を促進している可能性があるという最新の研究成果を紹介していただいた。また、単子葉植物を宿主とするブロムモザイクウイルス(BMV)を遺伝子発現ベクターとして開発し、アワやスイッチグラスからバイオ燃料生産を高める遺伝子を探索しているお話しもしていただいた。
セミナー後には非常に活発な質疑応答があり、予定時間を過ぎて終了するほどであった。その後に開催した交流会においても、招へいした先生方と積極的に話をする多くの学生の姿が見られ、研究への取り組み方を直接学ぶことのできる良い機会となっていた。
本チームでは、植物と昆虫に感染するウイルスと宿主の関係について、主に細胞膜を介した相互作用を分子レベルで解明していくこと、またそれから得られた知見を生物防除資材の開発に繋げていくことを目的としている。その点において、本セミナーを通して、新しい解析技術だけでなく、基礎的な研究成果を応用に繋げていく方法や考え方について、多くの示唆に富む情報を得ることができた。
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