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2019.8.9
講演者 Rowan F. Sage (Department of Ecology and Evolutionary Biology, University of Toronto, Canada)
◆日時:2019年8月2日(金)
◆会場:東京農工大学 府中 キャンパス 6号館209セミナールーム
◆言語:英語
◆開催担当者:安達 俊輔 助教 (グローバルイノベーション研究院 食料分野 大津チーム)
◆参加人数: 15名
◆開催案内
講演概要
地球規模の気候変動は植物の生態環境に大きな影響を及ぼすと考えられる。本セミナーでは、植物光合成生理学および進化学を専門とするトロント大学Rowan Sage教授に、気候変動がC3, C4, CAM植物の生態系にどのような影響を及ぼす可能性があるのかを紹介してもらった。講演の冒頭では上記3つの植物光合成システムの差異について、葉の内部形態や生化学モデルに基づいた説明があった。そのなかで、葉の内部にCO2濃縮機構を有するC4, CAM植物は高CO2濃度環境下ではその成長メリットが縮小し、よりC3植物の生存に適することが示された。そして気候変動―これにはCO2濃度上昇のみならず、他の温室効果ガス、多量の窒素施肥、土地利用の変化、人間による伐採、過剰な家畜生産、野生動物の過剰な狩猟などが原因となるーが多くの地域で植物生態系の変化をもたらし、ほとんどの場合でC4やCAM植物が減少し、一方でC3植物が優占種へと変化し、全体の生物多様性が減少の方向にシフトするだろうという予想が示された。実際にアリゾナ砂漠では過去100年の間にC4やCAM植物が減少し、C3の木本植物が樹勢を拡大してきているとのことである。すなわち気候変動の影響を最小化するように人間が行動しない限りは、生物多様性は失われていくという指摘であった。聴衆からは光合成のシステムの基礎に関わる質問や、どうしたらこの状況を緩和できるかなどの議論が起こり、意義深い会となった。本セミナー開催が夏季休業期間にあたり、参加者が少なかったことが残念だった。
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