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イベント報告

【2019.05.30 GIR公開セミナー報告】”Natural DENV infection in Bangladesh: detection, sero-prevalence and immunogenicity of DENV serotypes”

2019.6.3

講演者 Prof. Mohammad Monirul Islam (University of Chittagong, Bangladesh)

◆日時:2019年5月30日(木)

◆会場:東京農工大学 小金井キャンパス 12号館 1階 L1217教室

◆言語:英語

◆開催担当者:黒田裕 教授(グローバルイノベーション研究院  ライフサイエンス分野  水谷チーム)

◆参加人数: 20名

開催案内

講演概要

構造生物物理学と免疫学の境界領域をご専門とするMohammad Monirul Islam教授(チッタゴン大学・バングラデシュ)をお迎えして、GIR公開セミナーを開催した。講演では、デング熱の病原となるデングウイルス(以下DENV)における最近のご研究をご報告された。
DENVはDENV1~4の4血清型に大別され、何れかの血清型に初感染後、異なる血清型のデングウイルスに感染することで交差性免疫反応が引き起こされ、非常に重篤なデング出血熱を発症することがある。イスラム教授は、推定エピトープ及び宿主細胞の受容タンパク質との結合部位が座位することでウイルスの増殖及びその抑制に極めて重要なDENVのエンベロープ糖タンパク質の第3ドメイン(以下ED3、107残基のタンパク質断片)の分子レベルでの解析をGIRとの共同研究で進めている。
本講演ではED3を用いたDENVの検出法の研究を紹介した。DENVにおいては従来から安価で簡便なNS1タンパク質を用いた検出法が利用されている。しかし、NS1を基にしたDENV感染診断法では、NS1が短命(数日)であるため、偽陰性が多いほか、血清型を区別することが難しい。DENVをより正確かつ血清型特異的に検出するにはRT-PCRが必要とされるが、検査時間が数時間と長いうえ、高価な装置が必要である。イスラム教授は、ED3を用いてDENVを血清型特異的かつ簡便で安価に検出する方法を開発した。その方法を用いて感染した患者(ダッカを中心としたバングラデシュ各地の200名以上)の血清を解析し、RT-PCR法との比較を行った。その結果、DENV特異的RT−PCRは、DENV 感染血清のうち、42%が単一のDENV血清型感染であり、半分数以上の患者が2つ以上の血清型DENVに感染していたことが明らかとなった。また、単一血清型に感染していた患者はDENV1が67%もっとも多く、DENV2、DENV3およびDENV4はそれぞれ18%、12%及び3%を構成することを示した。残りの58%のサンプルでもDENV1が最も多かった(89%)。ED3を用いた検出はこれらの結果を完全に裏付け、ED3をDENVの安価な検出に用いることが可能であることが強く示唆された。以上によって、ED3による検出キットは、バングラデシュをはじめとする世界各地のデング負荷を軽減するためのツールに使用する価値があると提案された。講演後には本学教員及び学生かたら多く質問があり、GIRチーム内での共同研究が議論された。

講演者のイスラム教授

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